「外国人は派遣会社の社員だから、うちは関係ない」「在留カードは有効だから大丈夫」――製造業の現場で、こうした考え方はもう通用しません。
2027年(令和9年)4月1日から、外国人に不法就労をさせた事業者を罰する不法就労助長罪の罰則が大幅に引き上げられます。すでに製造業では、派遣先の工場長が逮捕された事例や、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(以下「技人国」)の外国人をライン作業に就かせて経営者が逮捕された事例も報じられています。
この記事では、製造業で実際に摘発された3つの事例をもとに、何が問題とされたのか、2027年4月から何が変わるのか、そして企業が今すぐ整えるべき確認体制を、出入国在留管理庁(入管庁)などの公表資料に沿って解説します。
この記事のポイント
- 不法就労助長罪の対象は「雇用主」だけではありません。派遣先の工場や現場責任者も処罰の対象になり得ます。
- 製造業で特に問題になるのは、在留資格は持っているのに、認められた範囲を超えて働かせるケース(技人国でのライン作業など)です。
- 2027年4月1日から罰則は「5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金(併科あり)」に。罰金刑でも、特定技能などの外国人受入れが一定期間できなくなります。
- 「知らなかった」は通用しません。確認を怠った過失があれば処罰を免れません。
なぜ今、製造業の外国人雇用が厳しく見られているのか
2026年に入り、外国人の受入れに関する国の方針は「秩序」と「適正化」を強く打ち出しています。主な動きを整理すると次のとおりです。
| 時期 | 主な動き | 製造業への影響 |
|---|---|---|
| 2026年1月 | 関係閣僚会議で「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を決定。在留資格の審査の厳正な運用などが柱に。 | 業務の実態と在留資格の整合性がより重視される |
| 2026年4月 | 入管庁が技人国のガイドライン(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について)を改定。 | 特定技能・技能実習で受入れ停止となった機関は、停止期間中、原則として技人国の新規受入れも不可に |
| 2026年7月 | 新たな「出入国在留管理基本計画」を策定。技人国の外国人が専門性を要しない現場業務に従事している事案を「対応が必要な不適切な事案」と明記。 | 技人国の現場作業への配置は、調査・是正の対象として明確に位置づけられた |
| 2027年4月1日 | 改正入管法の施行により不法就労助長罪の罰則を引上げ(育成就労制度も同日開始)。 | 不法就労が発覚した場合の刑事・行政上のダメージが格段に大きくなる |
摘発されて報道される事例は、全体から見ればごく一部にすぎません。一方で、入管法に沿った運用を徹底できていない企業は少なくないのが実情です。正しい運用に切り替えるには、外国人社員の職務内容の変更や配置転換、在留資格の変更、採用計画の見直しなど、社内の働き方そのものに手を入れる必要があり、決して簡単ではありません。それでも、「他社もまだ動いていないから」という理由は通用しない段階に来ています。
製造業で摘発された3つの事例
ここでは報道された内容をもとに、製造業で実際に問題となった3つの事例を紹介します(企業名・個人名は伏せています)。
- 概要
- 警視庁が、静岡県の人材派遣会社の社長と社員、そして派遣先である金属研磨工場の工場長の計3人を、入管法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕。派遣元・派遣先の両法人も書類送検されました。
- 何をしたか
- 技能実習先から失踪し、在留期限を過ぎて不法残留となっていたベトナム人4人を、派遣労働者として工場で働かせていた疑い(2024年11月〜2026年1月)。
- 背景
- 報道によれば、この派遣会社からは2020年以降、60人を超えるベトナム人が同じ工場に派遣され、工場側が支払った派遣料は約9,000万円にのぼるとされています。工場長は人手不足を理由に挙げたと報じられています。
教訓:雇用主は派遣会社でも、実際に自社の現場で働かせていた派遣先の責任者が逮捕されています。「派遣会社が確認しているはず」は理由になりません。
- 概要
- 警視庁が、埼玉県深谷市のカット野菜製造会社の社長と人事部長を、入管法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕。
- 何をしたか
- 技人国の在留資格を持つインド国籍の作業員を、野菜の加工・箱詰めなどの工場作業に従事させていた疑い。作業員らについても、IT企業で働くなどとする虚偽の内容で在留資格を得た疑いで逮捕者が出ています。
- ポイント
- 事例①と違い、作業員は不法滞在者ではなく、有効な在留資格を持っていました。それでも、技人国で認められていない現場作業をさせれば不法就労になります。報道では、社長は容疑を否認し、人事部長は人手確保のためだったと説明したと伝えられています。
教訓:在留カードが有効かどうかだけでは判断できません。その在留資格で、その仕事をしてよいのかが問われます。
- 概要
- 警視庁が、和菓子やカレーなどで知られる老舗食品メーカーと、同社工場の係長を入管法違反(不法就労助長)の疑いで書類送検。
- 何をしたか
- 人材派遣会社から受け入れていた技人国のネパール人6人を、約2年半にわたり工場の製造作業に従事させていた疑い。
- ポイント
- 「派遣での受入れ」(事例①)と「技人国の現場作業」(事例②)が同時に起きた形です。人材確保を優先してしまったという趣旨の説明が報じられ、会社は再発防止策を公表しました。
教訓:刑事処分の結論がどうであれ、捜査の対象になった時点で、実名報道や企業イメージへのダメージは避けられません。知名度のある企業ほど影響は大きくなります。
3つの事例に共通しているのは、人手不足を背景に「現場が先に動いてしまった」ことです。誰がどこで確認を止めるのかが決まっていなかったことが、結果として重大な事態を招いています。
製造業が技人国を「使いたくなる」理由と落とし穴
なぜ製造業の現場で技人国の外国人が配置されやすいのか。他の在留資格と比べると理由が見えてきます。
| 在留資格 | 受入れの手間・費用 | 現場作業 |
|---|---|---|
| 技能実習 (2027年4月〜育成就労) | 監理団体(育成就労では監理支援機関)を通じた受入れ、計画の認定、帳簿の作成、監理費など | 認められた職種・作業の範囲で可 |
| 特定技能1号 | 支援計画の実施(自社または登録支援機関に委託)、協議会への加入、各種届出など | 対象分野・業務区分の範囲で可 |
| 技人国 | 直接雇用が可能で、支援義務や監理費はない | 不可(専門的な業務のみ) |
手続きや費用の面だけを見れば、技人国は企業にとって使いやすい在留資格に見えます。しかし、技人国で認められるのは大学等で学んだ知識や専門的な技術を必要とする業務に限られます。だからこそ、入管も警察も技人国の外国人が実際にどんな仕事をしているかを重点的にチェックしており、今後さらに厳しくなる見込みです。
不法就労の3つの類型 ― 製造業で問われるのは「3つ目」
入管庁は、不法就労を次の3つのケースに分類しています。
| 類型 | 内容 | 製造業での例 |
|---|---|---|
| ① | 不法滞在者や退去強制が決まっている人が働く | 在留期限が切れた元技能実習生を派遣で受け入れる(事例①) |
| ② | 就労できる在留資格がなく、許可も受けずに働く | 留学生や家族滞在の人が資格外活動許可なしで働く/許可された時間(原則週28時間以内)を超えて働く |
| ③ | 在留資格で認められた範囲を超えて働く | 技人国の人が製造ラインで作業する(事例②③) |
製造業で問題になるケースの多くは、この③「認められた範囲を超えて働く」です。入管庁のリーフレットでも、コックや語学教師として働くことを認められた人が工場で作業員として働く例が挙げられています。
③は在留カードを見ただけでは分かりません。在留カードに「技術・人文知識・国際業務」と書かれていても、その人が現場で何をしているかを確認しなければ判断できないのです。外国人社員の業務内容を一人ひとり棚卸しすることが、そのまま不法就労の防止につながります。
罪の構造 ― 誰が、どこまで責任を問われるのか
1. 処罰の対象は「雇用主」に限られない
不法就労助長罪(入管法第73条の2)は、事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者などを処罰の対象としています。条文は「雇用主」に限定していません。そのため、雇用契約は派遣会社と結んでいても、自社の工場で実際に働かせていれば、派遣先も対象になり得ます。事例①で派遣先の工場長が逮捕され、事例③で派遣先のメーカーが書類送検されたのはこのためです。
2. 「知らなかった」では処罰を免れない
同条第2項は、外国人の在留資格や就労できる範囲を知らなかったことを理由に処罰を免れることはできないと定めています。例外は過失がない場合だけです。入管庁も、在留カードを確認していないなどの過失がある場合は処罰を免れないと明示しています。
在留カードを確認していない、技人国の社員が現場で何をしているか把握していない――こうした状態は過失ありと見られる可能性が高く、「知らなかった」はむしろ確認を怠った証拠になりかねません。
3. 両罰規定で「会社」も罰せられる
入管法第76条の2の両罰規定により、違反行為をした担当者・現場責任者だけでなく、法人にも罰金刑が科されます。現場責任者と会社の両方が処罰される――これが両罰規定です。
2027年4月1日から何が変わるのか
2024年に成立した改正入管法により、2027年(令和9年)4月1日から不法就労助長罪の法定刑が引き上げられます。
| 項目 | 現行(2027年3月まで) | 改正後(2027年4月1日〜) |
|---|---|---|
| 拘禁刑 | 3年以下 | 5年以下 |
| 罰金 | 300万円以下 | 500万円以下 |
| 併科 | あり | あり |
影響は刑の重さだけではありません。製造業にとって本当に重いのは、処罰を受けた後に外国人材の受入れルートが止まることです。
罰金刑でも生じる主な「その後」の影響
- 特定技能:入管法違反で罰金刑に処せられ、執行終了等から5年を経過しない者は、特定技能所属機関になれません(欠格事由)。
- 技能実習・育成就労:計画の認定についても同様の欠格事由が設けられています。
- 技人国:2026年4月改定のガイドラインにより、特定技能・技能実習で受入れ停止となっている期間は、原則として技人国の新規受入れも認められません。
- 人材派遣・職業紹介:不法就労助長罪は、労働者派遣事業・有料職業紹介事業の許可の欠格事由にもなっています。
つまり、一度不法就労助長罪に問われると、現場で外国人に働いてもらうための採用ルートが一定期間ふさがれてしまうのです。罰金を払えば終わり、ではありません。
さらに、2026年7月の出入国在留管理基本計画では、技人国の外国人が現場業務に従事している事案は対応が必要な不適切な事案とされました。入管の実態調査で発覚したとき、「次回の在留資格申請が不許可になる」で済むのか、「不法就労助長罪として刑事事件になる」のか――2027年4月以降は、その境目がより厳しく見られると考えておくべきです。
企業が今すぐやるべき3つのこと
① 在留カードを「原本で」必ず確認する
採用時と在留期間の更新時に、在留カードの原本で次の項目を確認してください。
- 在留資格(何の活動が認められているか)
- 在留期限(期限切れになっていないか)
- 就労制限の有無(表面の「就労制限の有無」欄)
- 資格外活動許可の有無(従来の在留カードは裏面、2026年6月14日以降に発行された「特定在留カード」は表面に記載)
- 入管庁の「在留カード等読取アプリケーション」と「失効情報照会」で偽変造・失効の有無をチェック
派遣や業務請負で受け入れている外国人も、派遣会社に任せきりにせず、自社でも確認してください。事例①・③はいずれも、派遣先が不法就労助長に問われています。
② 業務内容と在留資格が合っているかを確認する
技人国の社員については、次の2つの視点で確認します。
視点1:その業務は、専門的な知識・技術を必要とする業務か
判断するのは肩書や名目ではなく実態です。
| 判断 | 製造業での業務例 |
|---|---|
| 該当し得る | 製品・設備の設計、生産技術(工程設計・改善)、品質基準の策定・品質保証、海外取引先との通訳・翻訳、技術文書の作成 など |
| 該当しない | 製造ラインでの組立・加工・検品、梱包・箱詰め・シール貼り、運搬、清掃。「ライン指導」「現場管理」と名前がついていても、実際はラインを回すための作業指導や形だけの管理業務であるもの |
視点2:専門業務と単純作業が「混在」していないか
たとえば「午前は生産管理、午後はラインに入る」といった働き方です。申請上は専門業務として許可を受けていても、実態として現場作業が混ざっていれば、入管の調査で発覚した際に単純作業に従事させていたものとして不法就労助長罪に問われるおそれがあります。
③ 「止める」ルールを決めておく
3つの事例はいずれも、人手不足の中で現場が先に動いてしまったケースでした。疑わしいときに誰が・何を確認してから配置するのかを社内ルールとして明文化し、確認が取れるまでは現場に入れないことを徹底してください。
- 外国人の配置・配置転換の前に、在留資格と業務内容の照合を行う担当者を決めている
- 派遣元から受け取る在留カード情報を、自社でも原本(または読取アプリ)で確認している
- 技人国の社員の業務内容を、許可時の申請内容と比べて定期的に見直している
- 確認の結果を記録として残している
- 現場責任者(工場長・係長クラス)にも不法就労助長罪のリスクを周知している
よくあるご質問
- 派遣社員の外国人の在留資格は、派遣会社が確認しているので大丈夫ですよね?
- いいえ、派遣先も責任を問われる可能性があります。不法就労助長罪は「働かせた者」を対象としており、事例①では派遣先の工場長が逮捕されています。派遣会社の確認に加えて、自社でも在留カードの原本確認と、実際に任せている業務の確認を行ってください。
- 技人国の社員に、繁忙期だけラインを手伝ってもらうのもダメですか?
- 技人国で認められていない現場作業に従事させることは、短期間・一時的であっても資格外の活動にあたるおそれがあります。研修として現場業務を行わせる場合も、内容・期間・その後の専門業務への移行計画が合理的に説明できることが前提です。個別の状況によって判断が分かれるため、事前にご相談ください。
- 現在、技人国の社員が現場作業をしている可能性があります。どうすればよいですか?
- まずは業務内容の棚卸しを行い、在留資格との適合性を確認することが先決です。そのうえで、職務内容の見直し、配置転換、特定技能など現場作業が認められる在留資格への変更の検討など、状況に応じた対応を早めに進めることが重要です。
- 2027年4月より前の違反なら、軽い刑で済むのでは?
- 刑罰は原則として行為時の法律で判断されますが、刑の重さに関係なく、捜査・報道による信用の失墜や、受入れ停止などの影響は同じように生じます。また、不法就労の状態が4月以降も続けば、改正後の罰則の対象になり得ます。「施行前だから」と先送りする理由はありません。
まとめ
製造業における不法就労助長罪のリスクは、「不法滞在者を雇わない」だけでは防げません。派遣で受け入れている人も含めて自社で確認すること、そして在留資格と実際の業務が合っているかを実態で確認することが欠かせません。
2027年4月の厳罰化まで、残された時間は多くありません。外国人社員の配置を見直すには、職務の再設計や在留資格の変更など一定の時間がかかります。問題が表面化する前に、今のうちから確認体制を整えておきましょう。
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在留資格該当性チェックの詳細 企業様専用 ご相談フォーム※本記事は2026年10月時点の法令・公表資料および報道に基づいて作成しています。個別の事案の判断は状況により異なりますので、具体的なケースについては専門家にご相談ください。摘発事例は報道に基づくもので、被疑事実の段階のものを含みます。
参考資料
- 出入国在留管理庁「外国人の適正な雇用にご協力ください」(不法就労の3類型、在留カードの確認ポイント、不法就労助長罪の厳罰化)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001462230.pdf - 出入国在留管理庁「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」
https://www.moj.go.jp/isa/content/001415280.pdf - 出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」(最終改定令和8年4月)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001413639.pdf - 法務省「出入国在留管理基本計画」(2026年7月)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001467575.pdf - 出入国在留管理庁「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(令和8年1月23日 関係閣僚会議決定)
https://www.moj.go.jp/isa/policies/others/04_00104.html - 出入国在留管理庁「特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」関係資料(欠格事由)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001440289.pdf - 摘発事例:毎日新聞・産経新聞・時事通信(2026年3月4日)、NHK・毎日新聞・産経新聞(2025年11月13日)、各社報道(2021年12月17日)



