企業が外国人に不法就労させた場合の処罰

➤企業様必見-外国人雇用の情報

会社が外国人に不法就労をさせるとどうなる(会社は罰則等を受ける可能性はあるか?)?
結論は、会社が悪意であるかどうかにかかわらず、処罰の対象となります。

➀不法就労にあたる代表的パターンは以下四つ

【1】ビザ(在留資格)を持たない外国人(不法入国等)が行う収入を伴う活動。

【2】ビザ(在留期間)を超えて滞在しながら行う収入を伴う活動。

【3】就労ができないビザ(在留資格)の外国人が資格外活動許可を受けずに行う収入を伴う活動。

【4】就労できるビザ(在留資格)を持った外国人が、その在留資格の範囲を超えて行う収入を伴う活動。

➁不法就労の過去事例

事例1.日本人・ベトナム人による不法就労助長の事例

2021年6月から10月にかけて、人材派遣会社に勤める日本人の男性とベトナム人の女性が、留学等の在留資格を持つベトナム人の男性たちを、食品加工工場で就労させた事例が発生しました。この事例では、日本人の会社幹部1人が不法就労助長で逮捕されたほか、その男性の知人であるベトナム人女性1人と、不法就労していたベトナム人男性2人が不法残留で逮捕されています。

この事例は前述の【3】に該当します。在留資格「留学」では原則的には就労はできないため、就労する場合は資格外活動許可を受けたり、在留資格の変更許可申請をしたりする必要があります。

参考:警察庁組織犯罪対策部|令和4年における組織犯罪の情勢【確定値版】

事例2.フィリピン人による不法就労あっせん等の事例

2020年8月から2021年6月にかけて、倉庫作業員のフィリピン人女性が短期滞在等の在留資格を取得したフィリピン人男性たちを、知人の建設資材管理会社に紹介して就労させていた事例がありました。結果として、フィリピン人女性1人が「不法残留幇助」と「不法就労あっせん」の罪に問われたほか、建設資材管理会社の作業員として不法就労していたフィリピン人の男性8人が不法残留で逮捕されています。

この事例は、前述の【2】にあてはまります。ビザ「短期滞在」の在留期間は「90日もしくは30日、または15日以内の日を単位とする期間」と規定されているため、許可された期間を超えて滞在する外国人は不法残留の扱いとなります。【3】にもあてはまります。

参考:警察庁組織犯罪対策部|令和3年における組織犯罪の情勢【確定値版】

事例3.人材派遣会社社員らによる不法就労助長の事例

2019年7月から2020年10月にかけて、人材派遣会社に勤める日本人男性たちが、技能実習等の在留資格を持つ複数のベトナム人の男女を、水産加工会社へ派遣して就労させていた事例がありました。この事例では、日本人の男性5人が複数のベトナム人の男女を雇っていたとして、不法就労助長で逮捕されました。また、この日本人男性たちに人材をあっせんしたベトナム人の男性と、作業員として働いたベトナム人の男女5人も逮捕されています。なお、技能実習とは、日本の技術や知識などを外国人に移転し、開発途上国等の経済発展に貢献することを目的とした在留資格です。

この事例は、前述の【4】にあてはまります。技能実習ビザは、指定された勤務先【企業】でしか仕事は行えず、他の勤務先では仕事ができません。ちなみに、ホワイトカラー外国人のビザである「技術・人文知識・国際業務」を保有している外国人が単純労働や資格該当性のない業務を行った場合も、これに該当し、会社は不法就労助長罪の処罰対象となります。

参考:警察庁組織犯罪対策部|令和2年における組織犯罪の情勢【確定値版】

➂罰則について

雇い入れた企業も、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処せられる可能性があります。(入管法73条の2)

出入国管理及び難民認定法 第七十三条の二
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第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者

上記の不法就労助長罪に該当する行為をした者は、下記のいずれかに該当することを知らないことを理由として、処罰を免れることができません。ただし、過失のないときは、この限りでない。

[1]外国人の行う活動が資格外活動に該当すること
[2]外国人がその活動を行うに当たり法務大臣の資格外活動許可を受けていないこと
[3]第1項に規定する者が雇用等する外国人が、在留資格を有せず就労資格の無いものであること

また、2024年2月末には、政府が不法就労助長罪を厳罰化する方針を定めたことが明らかになりました。具体的には、罰則を5年以下の懲役(2025年6月からは拘禁刑)または500万円以下の罰金へと引き上げる見通しとなっています。現行よりもさらに厳しい罰則になることが予定されているため、外国人を雇用する際は今以上にチェックを強化する必要があるでしょう

➃不法就労を予防するために

雇用前に在留カードを必ず確認し、会社側で行わせたい労働が当該外国人の在留資格により行うことができるかどうか(在留資格該当性)を確認しましょう。在留カードを確認しても在留資格該当性がわからない場合は、行政書士等の専門家に相談しましょう。会社側に悪気がなく、かつ注意をしても、知識不足により、結果として不法就労をしてしまったというケースが多々あります。

身分系の在留資格をお持ちの外国人(日本人の配偶者等、永住者、永住者の配偶者等、定住者)は、就業活動の制限がないので、雇用しても不法就労助長罪になりませんが、就労系在留資格の外国人は、在留資格ごとにできる活動がことなります。例えば、日本で留学後に働いている外国人は、技術人文知識国際という在留資格で活動を行いますが、いわゆるホワイトカラーの就労ですので、単純作業をさせると違法就労となります。

国際行政書士金森勇征事務所