外国語教師は、日本で働く外国人の人気職業ランキングで上位の職業です。主に、自身の母国語を教える外国語教師が中心と考えられます。インバウンド需要も高まり、今後も日本人の外国語学習者は増加することが予測されるため、外国語教師は引き続き日本にとって必要な職業です。そのため、企業様には、外国人雇用におけるコンプライアンスをしっかり把握した上で、採用活動や業務の分配を行って頂きたいです。この記事を読めば、以下(1)、(2)、(3)がわかります。
(1)語学学校(スクール)はどの種類のビザ(在留資格)を持つ外国人を雇用できるか?
(2)外国人講師が担当できる業務の範囲は?
(3)外国人講師を雇用する側が罰せられる可能性がある不法就労助長罪とは?
語学学校(スクール)はどの種類のビザ(在留資格)を持つ外国人を雇用できるか?
1.技術・人文知識・国際業務ビザ
民間の語学スクールで外国人講師を雇用する場合の王道のビザ(在留資格)は「技術・人文知識・国際業務」です。大学を卒業していること、または語学教師として3年以上の実務経験があることが要件となります。母国語を教えることが前提とされていますが、母国語でない外国人がこの在留資格を取得することもできます。例えば、フィリピン人は英語が得意であり、このような場合、英語講師として、「技術・人文知識・国際業務」を取得することが可能です。また、中国語が得意な華僑のマレーシア人においても同様のことが言えます。
※注意が必要なのは、語学講師又は語学講師業務に派生する業務以外は、従事することができません。
例えば、学校の事務作業や本部スタッフ(経理、システム、総務、人事等)は不可です。
2.身分系ビザ(日本人又は永住者の配偶者等、定住者、永住)
身分系ビザ(日本人又は永住者の配偶者等、定住者、永住)は、就労に制限がありませんので、当然ながら、外国人講師となることができます。また、語学講師以外の業務、学校運営スタッフ、オンライン校運営スタッフ、法人営業、本部スタッフ(経理、システム、総務、人事等)の業務にあたることも可能です。
3.留学ビザや家族滞在ビザの保有者が資格活動許可を取得した場合
留学や家族滞在のビザで滞在中の外国人が「資格外活動許可」を取得すれば、週28時間以内であれば、就労可能となります。ここで注意が必要なのは、週の何曜日を起算点としても、労働時間は連続する7日間の内、28時間以内でなければなりません。
例えば、日曜日を起算点としてた場合は同一週内の土曜までで、28時間以内です。水曜日を起算点とした場合は、翌週の火曜までで、28時間以内です。
また、留学生においては、大学等の長期休暇の際は、一日8時間まで働くことが可能です(ただ、労働基準法に違反する労働時間は不可です。)
外国語講師が担当できる業務の範囲は?
1.技術・人文知識・国際業務ビザ
そもそも、日本で外国人講師を行っている方は、以下の「出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)」の赤線部分の業務を行うことが許可されています。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項,芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで,企業内転勤の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
つまり、スクールにて事務作業をメインで行うことや、本部スタッフ(経理、システム、総務、人事等)の業務は、この条文に当てはまりません。そのため、外国語を教える外国人講師が担当できる業務の範囲は、原則、レッスン若しくはレッスンから派生する業務と考えておくのが無難です。ちなみに、外国人講師を育成するスタッフや教材作成をメインで行うスタッフも、上記条文赤線部分にあてはまるでしょう。ただ、このようなスタッフは本部で勤務している場合があるので、多種の業務を担当するようになり、気が付いた時には、ビザ(在留資格)と関係のない業務(資格該当性がない業務)の比重が多くなっているというようなことがないように気を付けましょう。
2.身分系ビザ(日本人又は永住者の配偶者等、定住者、永住)
上記でも記載しましたが、身分系ビザ(日本人又は永住者の配偶者等、定住者、永住)は、就労に制限がありませんので、日本人と同様、語学講師以外の業務、学校事務スタッフ、オンライン校事務スタッフ、法人営業、本部スタッフ(経理、システム、総務、人事等)の業務にあたることが可能です。当然、語学講師も行うことが可能です。
3.留学ビザや家族滞在ビザの保有者が資格活動許可を取得した場合
資格外活動許可には、個別許可と包括許可の2種類があります。包括許可を取った場合は、働く場所や業務は指定されません。そのため、語学講師以外の他の業務も週28時間以内(長期休暇時間は1日8時間以内)であれば、行うことができます。ただ、週28時間以内しか働けない方に本部スタッフの業務を任せるというような会社様少ないかと思われますが。
外国人講師を雇用する側が罰せられる可能性がある不法就労助長罪とは?
不法就労助長罪
不法就労とは、「日本で就労する資格を持っていない外国人が日本で就労すること」です。例えば、在留資格を得ていないのに入国したり、オーバーステイ(在留期限切れ)していたり、働けない在留資格で就労したりすることが該当します。また、「就労可能な資格は保有しているが、その資格では行うことができない業務を行うこと」も、不法就労にあたります。
では不法就労助長罪とは、外国人に不法就労をさせたり、不法就労をあっせんしたりした者を処罰するもので、入管法73条の2に規定されています。働けない外国人と知りながら雇用したり、知らなかったとしても身分確認などをきちんと行わないで雇用していた場合に罰せられます。当然、就労可能な資格は保有しているが、その資格では行うことができない業務を行わせることも、不法就労助長罪となります。不法就労していた本人はもちろん罰せられますが、企業も処罰の対象です。以下(1)~(3)は、よく発生している不法就労助長罪です。
(1)不法滞在の外国人を就労させてしまった場合
(2)就労不可の外国人を就労させてしまった場合
(3)就労可能な資格は保有しているが、その資格では行うことができない業務を行わせた場合
(1)の発生を防止するためには、在留カードを確認し、本人確認、在留資格、有効期限を確認しましょう。
(2)の発生を防止するためには、語学学校で働くことが可能な在留資格は、おおよそ、「技術・人文知識・国際業務」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」、「資格外活動(包括許可)取得済の外国人(留学生、家族滞在者)」です。もし、判断がつかない場合は、行政書士にお問い合わせください。
(3)は、元々語学講師として雇用し、かつビザ(在留資格)は「技術・人文知識・国際業務」であるにもかかわらず、他の業務(例えば、受付や事務作業)、本部の作業をメインで行わせてしまうことがないよう気をつけましょう。こちら判断がつかない場合は、行政書士にお問い合わせください。
※不法就労助長罪による罰則は、3年以下の懲役 もしくは 300万円以下の罰金。場合によってはその両方が科されます。